rie - オスロで和菓子をやりたい理由を今一度考えてみた
どうも、rie です。
今日はスウェーデンで、シナモンロールの日なんだそうですよ。もちろん買いました(作れるほどの時間と気力はなかった。言い訳)。
そして、日本は今日が八月十五夜だったそうです。って、向こうじゃもう昨日の話だけど、オスロならまだ間に合うやろ、とイソイソ見に行ってみました。
が、これを書いている19:20時点では、まだ薄暗いのもあって見えません。残念。
さてさて。この夏こそ忙しなく仕事にいそしみましたが、わたしの本来の目的のもうひとつは、和菓子を作ることでした(まだご存じない方は、是非こちらを参照してください)。
今でこそ堂々(?)と「和菓子やってます」と言ってみてはいるものの、東京で和菓子屋をしているころは、職人ではなくて販売でした。
とはいえ、簡単なことは店頭でも作ったりしていましたが、イチから準備して作るのは、工房にいる素晴らしい職人さんたちでした。いやあ、彼らの作る豆大福をはじめ、朝生菓子たちは、本当においしいのだよ。あ~~~~もうヨダレ。
しかしですね。ヨーロッパの名だたる街には、日本食料品店やレストランの中でも和菓子を売っていたり、それこそ和菓子屋(パリのとらやみたいな)があったりするのですが、遠い北欧の地となると、首都オスロですら在住日本人がそれほど多くありませんので、需要は少ないのかもしれません。
一応、和菓子や材料も、あるにはあるのですが、冷凍だったり、日本のではなくて中国?韓国?ベトナム?のものだったり、当たり前ですが工場で量産されたような商品だったり。そして何より、とにかく高いです。よっぽど欲しいわけではない限り、気軽に買うことはできません。
そもそも、こちらに来る前、実際にオスロへワーホリをされた方に、和菓子に興味のあるノルウェー人っているんですか?とか、そもそも和菓子ってノルウェーにあるんですか?とか、気になることは質問してみました。
彼女いわく、和菓子はノルウェー人よりも、在ノル日本人が欲している、と。
それは、実際こちらに来てみて、よく実感しました。
というか、日本食全般に関して言えることかも知れません。
初めて住んだアパートには、ノルウェー人、デンマーク人、ルーマニア人がいましたが、和菓子って知ってる?と聞いても、うーん知らないな、スシならわかるよ、と。
嬉しいことに、日本の漫画やアニメ、アートに興味を持ってくれている人たちだったのですが、それでも食文化はよく知らない、とのこと。
寿司。スシ。SUSHI。
確かに、SUSHI はとてもよく見かけるワードです。町のいたるところに寿司屋さんを名乗る看板を見かけます。サーモンも美味しいですからね。
ただ、実際に日本人が経営していることはほとんどなく、従業員に日本人がいることも少なく、寿司屋なのにタイ料理がメニューにあったりして、おや?と首をかしげざるを得ないことばかり。まあ、それはそれでいいんだけど。
でも、それ以外の日本食って、ほとんど見かけない。ラーメン屋さん、アジアンダイニング、居酒屋(ひとつだけ)、たこ焼き屋台(これは最近できました、ここにたい焼きはあります)はあるけれど、店舗は本当に少ない。日本の家庭料理だとか、ましてや和菓子を作っているところなんて、多分ない。
もちろん、ここに来るまでは、そのような実態に目を向ける機会がなかったのですが、ここに住んでいる今、もう一度、わたしが日本にいるときに考えていたことを思い出してみました。
わたしは日本を出る前に、ひっそりと和菓子プロジェクトを立ち上げました。とはいえ、別にイベントをやったり人に教えるわけではなく、自宅でやってみたいお菓子を作っては、これは日本人とノルウェー人、どちらにも受け入れてもらえるのだろうか、と考えながら。
この先、何があるか分からないにしても、しばらくはこの名前でプロジェクトを続けてみたいなあと思っています。形から入るタイプなものでね。先に全部決めました。
リンクを貼りますので、もし興味のある方がいらっしゃいましたら覗いてみて下さい。
プロジェクトの名前は「sumiya - すみや」です。
名前の由来は、あまり深く考えずにつけたのですが、一応こんなことを思って名付けていました。
jeg skal starte en wagashi-prosjekt som heter "sumiya". hyggelig ;-)
---
和菓子プロジェクト、ひいては自分のこの先の人生における目標を少しでも進めるために、屋号をつくりました。
名前は"sumiya - すみや"です。
すみ、は 澄み/住み/墨/隅 などいろいろな日本語の意味を持つ言葉。
なんだかどれも、わたしの好きな言葉だなあ、と思って付けました。
言葉を入れ替えれば、やすみ、ともなるので、
日々の暮らしの中に潜む、ふとした気付きや喜びを、お菓子に込められたら、そしてそれをたくさんの人の心を休ませる要素となれたら、と思っています。https://www.instagram.com/p/BLi851Dl_0z/?taken-by=nnk_sumiya
名前は「屋号」にしたくて、最後に「や」を付けたかったのです。
自分の名前を掲げるほど技術や知識に自身があるわけではないけれど、これまでに培ってきた自分の審美眼を通して、なにか人に喜んでもらえることをやりたい。
小さいころから、周りには芸術タイプだね、と言われることがあるのですが、わたしは正直なところ絵を描いたり音楽を奏でたりするのは、残念ながらあまり上手ではありません。写真は好きかもしれないけど。
そんなわたしが小さいころから今まで親しんできたことは、料理、特に実際の職業経験ではカフェと和菓子屋で、それらをうまく活かしつつ、日本人だから出来ること、わたしだから出来ることをやりたいな、というようなことは、ぼんやり思っていました。
ずっと前から、あんことコーヒーは合う!と思ってきましたし、今でこそそういったアプローチは日本でも少しずつ現れてきたものの、まだまだ多くの日本人ですらも知らない、未知の世界。
それを海外で試してみるのは、ちょっとおもしろいかもしれない。しかもパリとかロンドンとかじゃなくて、オスロでやったら、いっそ誰も知らない、ほんとうにゼロからのスタートになりそうな気がしたのでした。
そうはいっても、ワーホリビザ中は会社を持ってはいけないので、出来る範囲でね。
というわけで、こちらに来てからやらせてもらったことを、ざっと紹介します。
1.知り合いの日本食 pop up restaurant でお手伝い
オスロに来てすぐに知り合った方に、ぜひ手伝ってほしいの!と頼まれ、当時彼らがやっていたプロジェクトのお手伝いに2度ほど参加させていただきました。
一度目は彼らの考案した抹茶パフェを作り、二度目は完全にわたしが好きなものを出していいよ、とのことで、和菓子を2種作らせていただきました。
立派なレストランを間借りし、当日お越しいただいたお客さまからは、和菓子が美味しかったと言っていただけて、とても嬉しかったです。
特に、アレルギーの多い方にとって、錦玉羹(いわゆる寒天を固めたお菓子)は良いらしい。とてもヘルシーだし、見た目もガラスみたいで綺麗だし、なのに美味しい!とのこと。
わたしは、和菓子にはついつい光や鉱物のような美しさを求めがちなので、そのお言葉は嬉しいです。
2.wagasi workshop
これも、来てすぐに知り合った方々に、自分で和菓子作りたいんです~っていう話をしたら、面白いね!となり、実現。やはり、物珍しさはあるみたいです。
練り切り餡を用意し、参加者の方々に簡単な説明をしたうえで、好きな形を作って頂きました。
初期からの不安要素のひとつである言葉の壁ですが、これは日本語が堪能なノルウェー人にお手伝いをして頂きました。ありがたや。
3.お花見イベントでお茶菓子を提供
これはワークショップと連動したイベントですが、主催が違いました。
お花見をBotanisk hage(植物園)でやるとのことで、ワークショップ後に和菓子を提供しに行きました。
お茶は別に用意していただき、練り切りのお菓子と共に、桜を愛でながら(ノルウェーの桜は5月から咲き始めます)、みんなでワイワイしました。
懐紙は日本で大量に頂いたので、それを持ってきました。
練り切り&ピスタチオ。従来の「菓子」の概念である「木の実、果実」を、日本という枠にとらわれることなく、気になるものは何でも使ってみました。
この日は、レストランデーといって、誰でもどこでもお店を出していい日でした。
1.で出会った方たちは、別の場所で日本食レストランをやっていたので、余りの生地で作ったお菓子を差し入れ。
こんな感じです。でもこれはすべて春のお話。
これ以降、実はほとんど活動できていませんでした。仕事の忙しさはもちろん理由のひとつなのだけど、日本を離れノルウェーで生活をしていたら、日本の感覚をすこし忘れそうになってしまうことがしばしばありました。
それと、これまでの活動は予想通り、ノルウェー人よりも日本人の方に興味を持ってもらえることが多かったのが実状。ノルウェー人って、知らない食材は手を付けない人もなかなか多くて。日本食レストランを手伝ったときも思いましたが、知らないから食べない~、みたいな人も多い印象でした。あるいは、ほとんど食べるけど、知らない食材だけは残す。
気持ちは分かります。わたしだって知らない食材を始めて食べるときは、けっこう警戒します。
それでもやはり、わたしの好きな場所や風景は日本にあって、そこに根ざした食文化が好きなのです。
どこにでもある、風習や文化、そしてその土地で育った素材をいただくという習慣。それは、いくら体が別の環境にあっても、心から本能的に欲する瞬間はあるのです。
でも、それを誰かに体感してもらいたいと思ったとき、変な話、日本ならけっこう簡単にできる。同じような文化や風習をもっていて、食材や調理法にも馴染があって、ああ美味しいよね、と言ってくれる人は少なからずいる。と思う。
けれど、今までわたしがわたしなりに感じてきた日本の食文化を、日本以外の世界で、すこしだけ誰かに体感してもらえないかな、と思うことがあって。
こちらの人たち、コーヒーはよく飲むから、そのお供に和菓子はどうかな、といつも思うのです。
そしていま、その計画を、また少しずつあたためているところ。
ああ、ここまで長々と書いたわりに、明確にコレ!といえる理由が言えていないような気がする。
でもまあ、そんなもんか。好きなことをやるのに、誰かを納得させることが出来るほどの明確な理由はあまりないのが、いつものわたしかもしれない。
今回は和菓子が中心のお話になってしまいましたが、本当はやっぱりコーヒーと一緒に出したい。いま、仕事としてコーヒーをお客さまに作っているけれど、このお店の食べ物にまったく日本の要素はない。でも出来ることならば、和菓子とコーヒーを提供したいです。
オスロにいるこの短い時間の中で、自分の場所をもって、喫茶店のように落ち着いて提供できる場所は、いまはなかなか作れないと思うけど、和菓子とコーヒー、どちらもほっと心を休ませることのできる要素たち。
このふたつで、誰かに喜んでもらえることができたら、もう最高なんだよなあ。それをいつか実現できるように頑張ります。
最後に、今日のおやすみソング。
haruka nakamura - 光 (Live at Waseda Scott Hall, 2011.12.25) 【Official Video】
ではでは。
rie